2019年
7月
18日
木
朝日新聞に「後藤正文の朝からロック」というコラムがあります。
昨日の記事が印象に残ったので、要約します。
3年ぶりに来日したアメリカのブルーグラスを基調とした「パンチ・ブラザーズ」のライブを見た。
(ブルーグラスとは、アメリカ南部に移住してきたアイルランドやスコットランド系移民の音楽とアフリカから連れてこられた黒人の音楽が融合して生まれた、アコースティックなストリングバンドだそうです)
マンドリン、ギター、バンジョー、フィドル、ウッドベースの5人組が、ステージ中央の1本のマイクを囲んで演奏した。
ソロパートを弾く楽器がマイクに近寄ると、他の楽器はマイクから少し離れる。立ち位置はそのままに前後の関係を入れ替え、各自が強弱をコントロールして、全体の音量を整えながらコンサートは進んだ。
音の大きな楽器や歌声が、爪弾かれるバンジョーやマンドリンの音をかき消すことなく、すべての楽器の音が客席に届いていた。
小さな音や弱い音にも意味があり、存在する場所がある。
僕らの社会はどうだろうか。弱い音や小さな声がかき消されない社会は、豊かなのだろうと思った。
ぜひ演奏を聴いてみたいと思ってYouTubeで探してみたら、あったので聴いてみました。
とても優しい、温かい響き。
「ブルーグラス」という言葉は聞いたことがありますが、どんなものなのか知りませんでした。
電気を通さない、人の肉声のような、そしてそれぞれの音を丁寧に聴き合うことで緻密に精巧につくり上げていく音楽。
大変な労力や、メンバーそれぞれの熱意と努力を要するものですが、そこに喜びや幸福感が生まれ、いろんな攻撃や衝突を繰り返す私たちの社会に対しても何か大きなヒントを示してくれているような気がします。
2019年
7月
05日
金
wowowで放映された映画「フジコ・ヘミングの時間」と、「フジコ・ヘミング ソロコンサート」を鑑賞しました。
不遇のピアニストだったフジコさんが、NHKのドキュメンタリーで取り上げられ、一躍脚光を浴びたのは何年前でしたか。
年齢は未発表だそうですが、あのころでも60代ぐらい?
いまはもう80代でしょうか。
あのドキュメンタリーも観ましたけど、フジコさんの独特な世界に魅了されましたね。
家の装飾も着るものも、ご自分の好みやこだわりがあって、時代を超越したような空気感が漂っていました。
あのころは本当に質素に暮らしていらして、食事も茹でたジャガイモを食べて、夜は一人でピアノに向かい、そのピアノの上を猫がゆっくり横切っていったり。
あの番組がきっかけで夢に見たピアニストとして成功し、今回の映画によるとパリの家を本拠地とし、ベルリンやサンタモニカ、京都にも家を所有して、世界のあちこちで演奏を続けているんですね。
こだわりのアンティークの家具や絵や写真に囲まれて暮らし、パリの街を歩く映像は、どこをとっても美しくて、まさに映像美あふれる映画になっています。
それにしても年に60回ほどのコンサートって、相当ハードですよね。
飛行機に乗って演奏会場に向かい、時には状態の悪いピアノで演奏したり、もともと聴力が弱い上に疲労が重なると余計に聴こえづらくなってしまうという。
若くて体力のあるピアニストでも、なかなか大変な生活ですね。
本当に音楽を愛し、そして信念のある強い人なんだと思います。
そして演奏も、古風ではありますが、フジコさんの個性と美意識の裏打ちがあって、強く印象に残ります。
主旋律をとてもはっきりと浮かび上がらせるのが特徴ですね。
時にはミスタッチもありますが、ご本人も以前から「少しぐらい間違ったって構やしない」とおっしゃっていますし(笑)、なんだかこちらまで勇気が湧きます。
録音技術が進んだ現代は、ミスのない演奏が当たり前みたいになっていて、少し窮屈な時代のように思います。
「いま私は恋に落ちてるの。相手はどう思ってるかわからない。でも、2、3年でも幸せならいいじゃない?」と言うフジコさんは、少女のような表情を浮かべていました。
「あと何年演奏できるかと思うと不安になる」ともおっしゃっていましたが、いつまでもお元気で活躍していただきたいと思います。