ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール

昨日までアメリカのフォートワースでヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールが開催されていました。

受賞者の発表も終わり、結果は以下のとおりでした。

1位 Yunchan Lim(18歳 韓国)

2位 Anna Geniuchene (31歳 ロシア)

3位 Dmytro Choni (28歳 ウクライナ)

 

コンクールの事務局では、ロシアによるウクライナ侵攻を非難する声明を出したものの、ロシアからの参加者を排除しないという立場をとりました。

コンクールに名前を冠しているクライバーンも、米ソ冷戦下でチャイコフスキー・コンクールに参加して優勝したということもあるのかもしれません。

コンテスタント一人一人が、個人的にこの戦争にどういう考えを持っているかはわかりませんが、それぞれが大変な努力を積み重ねて人生をかけてこのコンクールに臨んでいるわけですから、ロシアからもベラルーシからも、そしてもちろんウクライナからも参加できたのはいいことだったのではないかと思います。

 

クライバーン・コンクールは、チャイコフスキー・コンクールやショパン・コンクールに比較すると、どちらかと言えばマイナーな感じで、これまで私もそれほど注目してきませんでした。

でも、ありがたいことに、今回このコンクールもYouTubeで配信されて聴くことができたので、何人かの演奏を聴いてみました。

 

何と言っても誰もが驚愕したのが、1位になった韓国のユンチャン・リム。

若干18歳だというのに、唖然とするようなテクニックで他を圧倒する文句なしの1位だったのではないでしょうか。

セミ・ファイナルでは、リストの「超絶技巧練習曲集」の12曲全曲を鮮やかに弾き切りました。

ファイナルのラフマニノフの協奏曲も、韓流アイドルのようなしゅっとしたヴィジュアルからは想像もできないような強靭な音とオーケストラを置いていきそうな速弾きで、引き終わった瞬間の会場の「ブラボー」の唸りとスタンディングオベーションがすごかったです。

私個人としては、むしろ過剰ではないかとも感じましたが、この若さでここまで到達していることがすごくて、抒情性や音楽の深味はこれからいくらでも追求していけるとも言えるかもしれません。

 

2位のアンナさんは、何と妊娠中で9月に出産予定なのだそうです。安定感抜群の弾きぶりで、これならお腹の赤ちゃんも安心してお母さんの演奏を聴いていたかもしれませんね。

 

あと私がいいと思ったのは、セミファイナルまで進んだものの惜しくもファイナルに進めなかった亀井聖矢さん。進めなかった理由がわかりません。

桐朋学園の高2から飛び級で大学に進み、その年に日本音楽コンクール1位、ピティナの特級グランプリ受賞と、注目のピアニストです。

彼もセミファイナルは攻めたプログラムで、ベートーヴェン「ワルトシュタイン」、リスト「ラ・カンパネラ」、ラヴェル「夜のガスパール」、バラキレフ「イスラメイ」と難曲ばかりでしたが、見事な演奏でした。テクニックも素晴らしいですが、デリケートな音色も絶妙に弾き分け、非常に美しい演奏でした。

私はリム君より亀井さんのほうが好みかな。

彼もまだ20歳とこれからの人なので、コンクールも挑戦していくでしょうし、楽しみが1つ増えました。

家にいながらにして世界のコンクールが聴けるのですから、いい時代になったものです。

2025年にはまたショパン・コンクールもあるし、コロナも収まってくるでしょうから、楽しみがいっぱいです。