昨日、ワルシャワ・フィルのニューイヤーコンサートを聴くために、本当に久し振りにサントリーホールに行ってきました。
何年振りだったのか、思い出そうとしても思い出せないくらい(笑)
このビルに入っているお店も大分替わったようで、コンサートの前後に軽食がとれるようなお洒落なレストランが幾つもありました。
私のお目当ては、ポスター右上のニコライ・ホジャイノフの弾くショパン、ピアノ協奏曲1番です。
ホジャイノフのリサイタルは2度聴いていますが、オーケストラとの協演を聴くのは初めて。しかもサントリーホールですから。
ワルシャワ・フィルとは、ショパンコンクールの本選でこの曲を協演しているんですね。
オケのメンバーもステージに勢揃いし、いよいよ開演ベルが鳴った後、アナウンスがありました。
「本日のコンサートは、天皇・皇后両陛下がお越しになります」。
客席がざわめきました。そう言えば警備の人がちょっと多かったような。
そして、右手のドアからSP(?)に先導されて両陛下が入場されると、皆さん自然に起立して拍手が起こりました。
黒っぽいスーツ姿の人たちに囲まれて、銀髪のお2人はそこだけ光が射したように気品ある空気をまとっていらっしゃいました。皇后陛下はサンドベージュのような明るい色のスーツ姿で、髪やお肌の色とよく似合っていました。
左右に会釈をされながらゆっくりと歩かれて、私の数列前の席に着かれました。
演奏は、パデレフスキの序曲から。
このコンサートは、ポーランドの独立回復百周年の記念行事の皮切りだそうで、パデレフスキは作曲家・ピアニストであると同時に、主権を取り戻したポーランドの初代首相だったんですね。
そして、いよいよホジャイノフの演奏でショパン、ピアノ協奏曲1番。
最初はちょっと緊張しているかなと思ったのですが、すぐにいつものニコライ君になって、水を得た魚のように美しい音楽を奏でてくれました。
1楽章のテーマが戻ってくるところや2楽章の抒情的な部分は、まさに詩情溢れて、魂から旋律が湧き出してくるかのようでした。
ショパンの魂でもあり、ピアニストの魂でもあり、分かち難く溶け合っているかのようです。
テクニックも素晴らしく、演奏が終わった後は割れるような拍手と共に「ブラボー!」の声が響きました。
そしてアンコールはホジャイノフ自身の編曲で「ウィリアムテル序曲」。
超絶技巧で思い切り華やかに、そして不協和音も大胆に使った面白い編曲でした。
ニコライ君、花火上げたなと思いましたよ。
花火大会の最後の乱れ打ちみたいで、またまた聴衆を熱狂させてくれました。
この抒情性とヴィルトオーゾの部分をあわせ持っているところが彼の魅力ですね。
リサイタルを聴いても、曲によって少しむらがあったり、ミスタッチもするんですけど、恐れず果敢に音楽に没入していくところが「男の子」という感じで、惹きつけられます。
第1部だけで両陛下は帰られたのですが、第2部の「新世界より」もとてもよかったです。
ワルシャワ・フィルは、シャープでクリアな響きというよりは、温かみのあるいぶし銀のような響きで、ホールもいいし、とても気持ちのいい演奏でした。
両陛下がいらしたこともあり時間的に押していたようで、2部が始まったのが8時半過ぎだったので帰りの新幹線の時間が気になり、4楽章の終わり近いところで後ろ髪を引かれる思いで席を立ちました。
でも、両陛下のお出ましに遭遇することなんてなかなかない経験ですし、同じ空間で同じ音楽を楽しむことができて、思い出に残る素敵な夜でした。
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