散り始め

やっと咲いたと思ったら、きょうあたりはもうどこも桜吹雪が舞っています。

絶え間なく流れていく桜の花びらを眺めていたら、古い記憶の中から、ある詩の一節が、ふと蘇ってきました。

 

あはれ花びらながれ

をみなごに花びらながれ…

 

全部は覚えていなかったので、調べてみました。

 

甃(いし)のうへ(上)

 

あはれ花びらながれ
をみなごに花びらながれ
をみなごしめやかに語らひあゆみ
うららかの跫音(あしおと)空にながれ
をりふしに瞳をあげて
翳(かげ)りなきみ寺の春をすぎゆくなり
み寺の甍(いらか)みどりにうるほひ
廂(ひさし)々に
風鐸(ふうたく)のすがたしづかなれば
ひとりなる
わが身の影をあゆまする甃(いし)のうへ

 

三好達治の詩ですね。

桜吹雪が流れる下を歩くたおやかな女性の姿が目に浮かぶような、とても抒情的で素敵な詩です。

当時、この詩がとてもいいなと思って気に入っていて、たまたま国語の時間に指名されて朗読しました。

気持ちが入っていたためか先生にほめていただいて、嬉しいような面映ゆい気持ちだったことも思い出されました。

 

今も昔も、さまざまな思いを抱えたさまざまな人の上に、桜吹雪は降り注ぎ、流れているのですね。